敬語が身についていないと使えない
エレベーターに乗っていた時の事です。2、3人の友人とエレベーターに一緒に乗り込んで会話が盛り上がっていました。途中の階でエレベーターが止まったのですが、そのとき、奥のほうから「恐れ入ります」という声が聞こえてきました。年配の女性でした。
私たちが道を開けると、彼女は「ありがとうございます」と頭を下げて、エレベーターから降りて行ったのです。
エレベーターのドアが閉まると、友人とお互いに顔を見合わせ、「いまの人とても感じが良かったね・・・」と口々に言い合ったものでした。
よく「身にについた言葉」と言われますが、その女性の言葉遣いで物腰は、まさに彼女自身の人柄を物語っているようでした。
とくに、敬語の場合「身についていない」と、聞くほうとしては違和感を覚えてしまうことが少なくありません。また、どんなに敬語を駆使しても、気持ちがこもっていなかったり、口先だけで発した言葉というのは、相手に届くどころか、逆に「距離」さえ感じさせてしまいます。
そのよくわかる例が、男女の会話です。それまで親しみのある言葉で話していた夫婦や恋人同士が、ある出来事を境に別れることが決まった途端。「~をしていただけますか?」「かしこまりました」などと急に敬語を使い、やけにていねいな言葉遣いになることがあります。お互いに敬語を使うことで距離を保つことになるのです。
相手と協調するための言葉を使いこなせ
さて、もともと敬語とは、文字どおり相手を「敬う言葉」という意味です。したがって、先の例のような敬語の使い方は、あまりしたくはない例と言えるでしょう。
いずれにしても、敬語を使うということは、相手を一人の人間として尊重するということなのです。
私たちの生活や仕事の周辺には、さまざまな状況があり、さまざまな人間が存在します。そこには誰一人として同じ人間はいません。「立場」「年齢」「経験」「知識」など、どれひとつをとっても明らかな「違い」が存在するのです。その「違い」あるいは「ギャップ」を埋めて、相手との協力態勢を形成していくための、ひとつの手段として存在するのが敬語なのです。
こう考えてくると、敬語というものは、私たちが他人とうまく付き合っていくための武器と言えるかもしれません。
それはまた、自動車を運転するのに必要な「運転免許証」のようなもので、人とよりよくかかわっていくための「パスポート」とも言えるのです。
私たちは日々、さまざまな人たちと出会います。そうした人たちの中には、初対面の人もいれば、少し苦手なタイプの人もいることでしょう。あるいは大事なお客様で、緊張を強いられるような人もいるはずです。
しかし、敬語というパスポートをきちんと活用すれば、誰とでもスムーズにコミュニケーションが図れるようになるのです。
まずは敬語の持つ意味について、じっくりと考え「身についた言葉」として活用できるまで高めていく努力を、怠らないようにしましょう。
★最後に一言★
マナー研修を受けてみるのもいいかもしれませんね。